築百年を超える我が家は、随所に先人の知恵と工夫が凝らされており、その佇まいには独特の温もりと風格があります。数年前にこの古民家を受け継ぎ、少しずつ手を加えていく中で、最も心を惹かれたのが、長年使われてきた木製のドアと、そこに付いている真鍮製のドアノブでした。時を経るごとに深みを増した真鍮の鈍い輝きと、手に馴染むずっしりとした重みは、この家の歴史そのものを物語っているようでした。しかし、長年の使用により、いくつかのドアノブは動きが悪くなったり、傷が目立つようになっていました。そこで、家の雰囲気を損なうことなく、使い勝手の良いドアノブを探す旅が始まったのです。最初は、ホームセンターなどで見かける新しいドアノブに目を奪われました。機能的で洗練されたデザインのものが多くありましたが、どうしても我が家の古木のドアには 似合わないように感じられました。インターネットで古民家に合うドアノブについて調べていると、アンティークの建具屋さんや金物屋さんがあることを知りました。藁にもすがる思いで訪ねてみると、そこには様々な時代の様々な素材のドアノブが所狭しと並んでいました。一つ一つ手に取ってみると、そのデザインや質感、そして経てきた時間を感じることができ、まるで宝探しのようでした。店主の方に我が家のドアの写真を見てもらい、相談に乗ってもらう中で、いくつかの候補が見つかりました。その中でも特に心惹かれたのは、明治時代に作られたという真鍮製のドアノブでした。表面には細やかな装飾が施されており、長年の使用によってできたであろう小さな傷や色の変化が、かえって味わい深さを醸し出していました。店主の方によると、当時の職人が一つ一つ手作りしたもので、二つとして同じものはないとのことでした。まさに、我が家のドアに合う唯一無二のドアノブだと感じ、すぐに購入を決めました。古いドアノブを取り外し、新しい(と言っても百年以上前のものですが)ドアノブを取り付ける作業は、DIY初心者にとっては少し苦労しましたが、無事に完了した時の達成感は格別でした。新しくなったドアノブは、古木のドアに驚くほどしっくりと馴染み、まるで最初からそこにあったかのように自然でした。
古民家の趣を添えるドアノブ選びの物語